ガツンとゆるい所感

機械工であり、二児の父であり、世界20カ国で遊んだり仕事した旅人がお送りする、仕事や生活での気づきや学び。毎朝7:30に更新していき、1000件を目標に記述を残します。

0323_ご迷惑をおかけします観

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マレーシアの工場でものづくりの現場仕事を

していると、よく加工不良や納期遅延などで

前工程後工程に"ご迷惑"が及ぶことが多い。

 

何でこんなにグダグダなのか?と

赴任した当初は不思議で仕方がなかったが、

色々と自分なりの理由をつけて納得をしてきた。

 

・気候が温暖だから人の危機感が薄い

・人に怒らない、人を責めない文化がある

・下請け、孫請けの作業者は移民で、育たない

 

今回記録しておこうと感じたのは、珍しく

日本人とやりとりをすることがあったこと。

 

私がマレーシアで使用している日本製の機械、

ブレーキという鉄板を曲げる機械がある。

その修理は原則取引先の日本人にエラー内容などを

問い合わせすることになっている。

 

そこで、日本語でこのメッセージを受け取るのだ。

"ご迷惑をおかけしてすみません"と。

 

メーカーではよく、こんな話を耳にする。

ヨーロッパの機械は基本的に売ったら終わりで

買った側が自分で面倒を見る文化に対して

日本側は買った後のアフターケアが秀逸、と。

 

つまり、メーカーからしてみると、自社から

出荷されて納品後に使用されている、権利も

現物も何もかもお客さん側に渡っていて、

自分たちは製作しただけ、という見方もできる。

 

それでも買った人が長い年月を経て感じる

不具合や改善点に対してはとても真摯だ。

 

現に私がいま修理対応のやり取りをしている

ブレーキはもう生産から15年ほど経つ年期ものだ。

 

それでも、15年経った機械が無事に動かない

ことに対して"ご迷惑"を詫びる文化が日本には

ある。これは驚くべきことだ。

 

私たち若い社会人が時よりいつまで経っても

子どものような扱いを受けるのに対して、

「売ったら終わり」の国々は生まれた時から

子ども扱いはしないという。それは"個"に対して

強く揺るぎない信念があるからであろう。

 

対して日本人の感覚では、自分から生み出した

もの、育て上げた人は、いつまでも自分に

帰属し、面倒をみたくなるのではないか。

 

どちらがいいかと言えば、私はいつも中庸で。

 

"ご迷惑"をかけられた感覚はない私には、

このご迷惑をおかけしますという言葉は少し

度が過ぎる印象と、心からそう思ってる?と

疑問に感じてしまう感覚がある。

 

他方で挨拶程度にでもこの言葉を言える日本語は

美しいな、とも感じる。良くも悪くも、

相手を信用し頼りたくなる心理が働く。

 

自分は圧倒的に、メーカーに問い合わせるよりも

メーカーとして問い合わせられることが多い。

 

しっかりと前工程・後工程を見て、

みんなで和を重じていいものづくりがしたい。

 

謝るべきだ、とか。責任を取れ、と

ヤジを言う日本人が多いのも事実だ。

しかし、その群れを見るより先にまず

ご迷惑をおかけします。という心から相手を

思いやる日本語を使える美しい日本人に

出会おう。それは、インターネット上にある

多数の文字の羅列から見つけるのではなく、

美しい個人同士が投げ交わす、美しい日本語だ。

 

今日も明日も言葉遣いや細かい所作の中に、

配慮や感謝が表せられるよう丁寧に生きよう。