ガツンとゆるい所感

機械工であり、二児の父であり、世界20カ国で遊んだり仕事した旅人がお送りする、仕事や生活での気づきや学び。毎朝7:30に更新していき、1000件を目標に記述を残します。

0169_23歳の神対応に驚かされる

マレーシアのクアラルンプールから北へ

200kmほど離れたTaipingという街に来た。

作った機械を客先へ納品するための出張だ。

 

毎日工場で仕事をする、慣れたメンバー3人と

同じ工場で仕事をしてくれている電気工事業者の

若手メンバー、名をキアットという23歳男子、

そして私。ガチガチの男5人で1週間の旅だ。

 

彼、キアットは大人しそうな中華系の男性で

あまり多く英語で話さないことから、今まで

とくに話したり作業することがなかったが

彼がただ大人しいだけではなく、若いのに物凄く

気遣いができる男であることに驚いている。

 

いつも、車を降りるときや道を歩くときに

自分が先に行こうとしないことや、店で

何か注文する時には真っ先に私が食べる物を

確認して通訳して現地の商店などで伝えてくれ、

ここで待っていたら持ってきてくれますから。

と座るところまで説明してくれた後に自分の

食べるものを探しに行く。

 

食べ終わったら口を拭くためのティッシュ

さりげなく差し出してくれる。見た目はどうみても

田舎の優しそうな男子だが、(余談だが私は

広東人によく間違われる)日本人の

一流ホテルマンのような居心地の良さがある。

 

彼は電気技師として参加してくれており、

機械の設置後の通電確認などを担ってくれる。

 

そんな気遣いの彼だから、仕事面でも

自ずと信頼関係が構築しやすく、私も

彼が手一杯にならないように配慮しやすい。

 

仕事をする仲間に大切なことが二つある。

理解力と思いやりだ。これが案外、発揮できる

人とずれていて煙たがられる人とタイプが別れる。

 

とりわけものづくりの現場では図面や納期、

規格や物理などで正解がはっきりしており、

「すべきことを早く正確に終わらせよう」

という暗黙のプロトコルがある。

 

どの業界でも比較的共通するかもしれないが

私が過去に経験した営業職や事務職などとは

違い、仕事の成果は物理的に推し量りやすい。

 

多くを話そうとしない者が多く、またせっかちで

心配性な性格は製造技術者の一つの特色だ。

 

そんな中、彼のように一見せっかちでも

心配性でもなさそうなのほほんとした人種にも

技術者の世界で生き残れる性質は多くある。

 

一つは失敗をしないように丁寧であること。

もう一つは仕事に対して揺るぎない美意識を

持っていることだ。

 

配線作業をしていて、いつも彼がやっているのを

理解した上で、別の配線経路と束線をやって

彼がどういう反応をするか試してみた。

(どう?と聞くのはいやらしいので黙って)

 

すると彼は私の仕事に気づき、寄ってきて

この束線はいつもとやり方が違う。と

私に説明してきたのだ。その時点で感心するのは

自分は自分、他人は他人という感覚を捨て、

10歳年上の私に日頃と異なる作業を伝えて

くれたことだ。ところが彼は私に日頃の

配線経路と束線方法を説明しながら止まって

暫く考えた後に私に言った「いつもとは

違うけれど、この方が見た目は美しい」と。

 

何もこれは私が満足できたことや、

キアットが媚びてきことではない。

 

彼は自分の美意識で仕事を推し量っているのだ。

 

結果的に互いの経験値や過去の功績などを

考えずに、今見た見た目から美しいかどうかを

瞬時に判断したのだ。

 

彼はまだ若い。10年経ってようやく今の

私の同じ年齢になるが、おそらくかなりの

技術と人望を持った男になるだろう。

 

歳をとって経験値や専門性が顕在化すると

若い頃のように人から教わって感動する機会が

減り、自分で学びたい意欲や無知の知

繁忙の中で少しずつ減退していくものである。

 

彼のように周りには神対応と言えるような

心配りをしつつ、怖がることなく自分の美意識を

周りに対して発表できるように私もなりたい。