0038_トヨタの口ぐせの感想
中経の文庫「トヨタの口ぐせ」を拝読。
仕事と子育てで読書時間を満足に持てない
勤め人は少なくないだろう。私もその一人だ。
この一冊は、ものづくりに携わる人間には
「分かっているけどもう一度再認識すべき」
大切な教訓がたくさん書かれている。
そして、章ごとに区切って読みやすい。
隙間時間の読書には最適な一冊であった。
「者に聞くな、物に聞け」というフレーズは
私が今最も腑に落ちる内容だと感じた。
何か不明なことや不安なことがあると、
一番簡単なのは人に聞き、教えに従うことだ。
これはある種、仕事を覚えたての20代では
行動原理とも言えることだろう。
しかし、30代はそれではいけない。
誰かに教わりながら仕事をするのは、ある種の逃げ道を作ることにつながるからである。
言われた通りやるのは思考停止の一種だ。
そして、なんでも分かっている人は
何でもかんでも人に尋ねることをしない。
まず、悩む。そしてよく考え、よく調べる。
これができないことにはどんなに処理能力を
高めていったとしても、所詮指示待ちである。
先手を打とうとか、現状を打破しようという
熱い気持ちがあるなら、「教わろう」の前に
自分で納得のいくレベルまであれこれ行動して
徹底的に調べ、研究するものである。
物に聞く、というのは、事務仕事をする人や
サービス業の方にとっても通用する。
扱っているものが書類上や無形のものでも、
かならず対象となる物理的なものがあり、
その成立ちや歴史は、どの分野にも存在する。
ブログを書いておいて、本末転倒であるが、
ネット情報を頼りに行動をすることは、
者に聞くレベルであると私は考える。実態が
どうなっているのかは、現場にしかない。
ネットの中に仕事を持つ方とてそれは同じで、
インターネットを使用する相手方の立ち位置や
環境などへ、かならず物理的な背景がある。
この「物」に迫る気質を育み、壊れたり
分からなかったりする恐れを、行動で以って
取り除いていった先にこそ、「分かる人」
となるだろう。私は今のところ物を作る仕事柄
物に聞くチャンスの方が多い。
通電や空圧は目に見えない世界があるが、
シーケンスや電気回路とて、図解して考えると
それは物として捉えることができる。
どこまでいってもこの世界は物の集まりだ。
製造現場では物を伝える際、とりわけ
ベテラン同士なんかでは、見たら分かる
という表現を使う。これは口で説明するよりも
現物を見た理解の方がはるかに早いためである。
今の機会を活かして、真実を見極め続け、
者に聞かなくても物を見て、仕事や市場を
見出せる存在になっていきたい。