0018_趣味「負けず嫌い」のおじさん
職場で、伝説的に言葉も顔も鬼のような
おじさんがいる。今回はダメな人紹介か?
いや、全くこの方が伝説的にカリスマである。
この方は人当たりがよくないためか
技術的な仕事をする全ての社員の頂点に立つ
抜群の頭のキレとセンスとユーザーへの
心配りがある人物であるにもかかわらず、
並みより少しいい程の給料をもらって
文句も言わずに約50人の仕事の結果の責任を
黙って背負って毎日寡黙に働いている人物だ。
誰もがあの人のようなセンスや経験に
至りたく、しかし安易に声をかけられない
修羅のオーラを放っているために、いつでも
どこまでも一人で高みに行ってしまわれる。
その方の余暇について、貴重なタイミングで
酒も入って、私はインタビューに成功した。
本当に鬼のような方で、現在営業職の中で
指折りに仕事ができる評判の先輩O氏ですら、
入社時はしばかれて脚立からメガネが落ちて
耳にかけるところが折れ、泣きそうになって
いるところにガムテープを投げつけられた
(現在は全くそのようなことは謹んでおられる)
泣きながらガムテープでメガネを補強した
O氏の当時を振り返る戦慄の表情を知っている
数少ない後輩の一人である私が、尋ねてみた、最近休みの日に何しましたか?
の回答について発表させていただきたい。
※盛った表現だが、これに嘘偽りはない。
「最近は車いじりも庭いじりも落ち着いたし
家のリフォームし始めたな」
なんだ、奥さんもあるし家庭的だな。
話を広げさせていただいたところ、喝が入る。
「お前電気工事士取った後なんかしたか?」
私「展示会出張の通電処理や電気配線の仕事
も少し経験させてもらってま…」
「アホ、そんなん知っとるわ。
自分の家で何かしたかってことや」
私「いえ、生活には何も生かせてないです」
「工事士の資格なしに家の電気配線触って
もし事故になったら法律やぶりなんやぞ、
分かるか?工事士はそれやってもええんや」
いま何に怒られているか掴めないでいると
もう1人の温和だが抜群にキャリアのあるM氏、
「この人はな、もう既に何回かやって
技術でリフォーム業者に勝ったんや。
この人の趣味は負けず嫌いやからな」と。
なるほど、やったことでなくて、
やり切ってもう負ける気がしないところまで
リフォームをやりきったのか、と理解した私。
「お前だけじゃないけどな、俺らみたいな
学もないのにいつまでも好きなことできて
上に行き続ける人間はどんな奴か分かるか」
もちろん分からないが慇懃な沈黙を保つ私…
「ただ、知らんのが嫌なんや」
…なるほどたしかにこれはかなり腑に落ちる。
何か知りたいことがあまりに好きだと
いつまでも調べたり仕組みを考えたりするし
好きで何でも知ってると思ったのに
知らなかったことがあるとかなり悔しい。
それでいてそれを10年も20年も貫けることは
もう1秒でも気を晒さないほどに好きである。
先述の、何に燃えて何に燃え尽きるか、
の論にも通じる。それが好きだったと思い出す
程度ではまだまだ好きになりきれていない。
私には彼の機械が動くことが好きという
それに値する壮大なテーマはないが、
誰がどんな風な経緯で物事を考え、工面し
それを体現しているのかを知りたいという
人間観察や自分の家族を実験台にしての
育ちを研究するというテーマでは、
「夢」や「未来」を題材に、これから
あらゆる角度で発信できそうである。
私は彼に何度も挑んで負けているが
一つだけお前には負けたと言ってもらえている
一つの取り組み、ライフワークがある。
いつでもやっていることなので、
ブログのテーマに困ったり、特筆すべき
成果があった際、その活動について述べたい。
ちなみに私が怒られてきた中で
一番気に入っている彼の一言は
「お前役に立たんから俺の代わりに
ションベン行ってこい、アホ」である。