0061_物欲とお礼の話
先日、社員旅行で道後温泉へ行き、
その宴会の出し物でゲームをした。
ゲームについては別の記事でまとめたい。
タイトルは「口だけか手だけか」にしよう。
ともあれ、結果めでたくゲームに勝った私は、
景品でGoogle Home miniという音声認識の
最新家電を手に入れたのであった。
これには、大変良い方のお心遣いがあり、
今回はその顛末について記録したい。
勤め先の工場で一緒に作業をしている、
Sさんという方は私の少し年上で35歳くらい。
高校卒業とともにものづくりの道に入り、
以来ものづくり一筋でもうすぐ20年になる方。
数年前転職して入ってきたので、社歴は
私より後輩にあたるが、私は彼が持っている
経験や優れた考え方に憧れを持っている。
「自分ものづくりバカなんで」と照れた様子で
はにかむ表情がなんとも、日本のものづくりを
根底から支える強い男を印象付ける方である。
そのSさんとは2018年11月の社員旅行で同じ班
になり、一泊二日だが親睦を深めた仲である。
このSさんの良い行い、考えについての記録。
温泉宿に泊まって、夜の宴会の際に
ゲームが行われ、各チーム8名ほどで競い
優勝チームの景品は、高級加湿器、人数分!
という催しの始まりに、酒を飲んでいたのも
手伝い、参加者40名はかなりの盛り上がりに。
何かにつけて負けず嫌いな私は、ゲームに
勝ちたいと意気込む一方で、加湿器は
家にあるから欲しくないなと感じた。
そこでと隣にいた総務の方に、自分は優勝
するつもりだけど、加湿器は要らないから、
優勝したらあげるよと約束した。
ここまでは私が自分で楽しめるペースで進み
ゲームは仲間に恵まれてのぶっちぎり優勝。
憧れのSさんも同じチームだった。
お楽しみの景品の授与となった時、
(私があまり話を聞いていなかっただけだが)
加湿器を3名、Google Home Miniを5名に!
ということが発表された。
私は、私以外の7人が欲しい方を貰って、
加湿器が余ったらあの人にあげようと
お先にどうぞと言っていたが、Sさんも
私と同様、お先にどうぞのスタンスだった。
結果、加湿器とGoogle Home Miniが一つずつ、
私とSさんが残った。さてどうしたものか。
Sさんが「欲しい方をもらいなよ」と仰り、
私はそこで正直に、Google Home Miniが
欲しいことを告げる。別に悪いことはないが
Sさんの懐の広さに胸を借りてしまったのだ。
優勝して加湿器あげるよと宣言したものの
きまりが悪いなと思いつつ宴会はお開きに。
すると翌朝になって、総務の方が私に
昨日は加湿器をありがとうございましたと
お礼を言いに来てくださった。
話が違うぞと思い、私はGoogle Homeを
手に入れたことと、Sさんが加湿器を貰った
はずと伝えたところ、総務の方は、
私からの贈り物だと言って渡された、と。
こうなってしまっては感服を超えて
男として完敗。Sさんの男気に圧巻である。
ということで、後日私が東京に行った際に
お礼にLAMYのボールペンをSさんに買い、
総務の方からもプレゼントを買ってもらい、
二人からのクリスマスプレゼントとして
12/25に差し上げた。Sさんは困惑していたが、
私たち二人とも加湿器もGoogle Homeも
手に入れて感謝してますと伝えたところ
「あれはおれがあげたんじゃないよ」と。
「横から来たものを横に渡しただけで…」
Sさんには、物欲のなさという、揺るぎない
武器があり、少なくとも私とその総務の方は
その武器であっさり斬られたていである。
本当は欲しかったそぶりなど微塵もない。
Sさんのように物欲を捨てきることは
誰しもに出来るわけではないが、それでも
誰かに機会を譲るということは、実践すると
善人の中で温かい結束を生む。
Sさんとってはその後、私や総務の方は
何もしてないのに贈り物をくれた人として
深い情を注いでいただける対象になるだろう。
欲がないだけではなく、慈悲深い。
彼のような方に会えただけでも私は思う。
善人の集まる組織で勤め人をやっていて
心から良かったな、と。
ちなみにSさんは車が好きな方で、
日頃は遠くから電車通勤し、休日は
レクサスを乗り回していらっしゃるらしい。
今年もあと2日。明日の12/28は納会や
大掃除で業務が止まるので今日が実質最終的な
今年のエンジニアリングの締め日。
適度な緊張感とリラックスで臨もう。